2011年3月30日水曜日

推進派の巻き返し

この間、推進派のなりふりかわまぬ醜態が目立ちます。
このまま炉心溶融・水蒸気爆発などの大放出がなければいいと願いますが、すでに東日本は数十年のスパンでガン発生率があがっていく疫学的社会になってしまいました。私に言わせれば「確率的な業務上大量致傷・殺人事件」です。
想定を超える天災だったのだからというキャンペーンが日経・テレ東ではられています。東電への支援や国有化などという発言まで出ています(「日経ビジネスサテライト」にて)。キャスターいわく「わたしたち東京の人間は原発の電気を享受してきたのですから」。

電力会社という独占企業は設備投資に比例して利益を保証されるというとんでもない料金設定をしてきました。戦中の総力戦体制という国家官僚制社会主義の生き残りといえます。
それも高い電力料金を問題化されないために、一般消費者には高い料金、大口消費者(つまり大企業)には割引料金を設定するという「国策会社」というかいわばぼったくり企業でした。
自然エネルギー推進の声を押しつぶして原発という巨額投資(自由化されたアメリカでは投資回収が長期に渡りさらに価格競争力もどんどん落ちているために民間資本が資金を出さない)を推し進め、国策として官僚・研究費をふんだんに税金を使って投入し、反対派を金と暴力で排除してきた連中を、また税金投入で救済するというのでしょうか。
どこまでいってもつけを国民全体におしつけようとしている。いいかげんにしていただきたい。法治国家であるならば、刑事・民事両方の容疑者たちである推進派全体をしっかりと明るみに出して、ひとりひとりの責任を追及するべきだと思いませんか(私は末端の現場労働者のことを言ってるのではありません。政策決定・遂行責任と経営責任を負うべき官民学の官僚たちのことを言っています)。
さて、NHKで29日の11時半ころの「放射線に詳しい問い合わせ先」で、どうせ放医研とか推進派が紹介されるだろうと思っていたら、なんと最初に出てきたのが「原子力資料情報室」だったのです。
ああ、NHK内部で良識派の反乱が始まったな、と思いました。この動きが官僚たちにつぶされないようにしたいものです。
特に表面にでてきているのは水野解説委員で、29日夜の解説委員番組では東電と政府の情報の出し方が「非常に」不十分であるとはっきりと指摘しました。日本のみならず世界の原子力知識の総力を結集して事態にあたらねばならない、とも発言しました。つまり、言外に推進派の隠蔽・閉鎖体質が対策の遅れの原因だと庶民に知らせようとしているように思えます。
NHK科学文化部記者たちのブログ(番組の要約あり)
しかし、報道機関内での庶民派・良識派は比較少数でしょうし、業界の利益配分を上にいくほど受けていますから、圧力がかかっているのは間違いありません。
「担当記者」というのは各官庁内に無料で提供された「記者クラブ室」に勤務して官僚の操作した情報を伝達するだけの存在だということはここ数年はっきりしてきました。
例えば村木事件での法務省・特捜検察での犯人でっち上げとその報道のされ方で明らかになった通りです。
原発関係では、当初は推進派であった福島県知事・佐藤栄佐久氏が東電と経産省の役人の不誠実さ、事故隠しが明らかになって第一原発3号機のプルサーマル受け入れを撤回する方針を示した直後、でっち上げの収賄事件で辞職させられたことがありました。裁判所は有罪判決をくだしましたが、収賄金額は認定されていないのです。佐藤氏のサイトです
http://eisaku-sato.jp/blg/profile/

さて、今朝のNHK、有働キャスターの番組では、また「安全安心」連呼が行われていました。ところが、「専門家」の東大教授がしどろもどろで、目が泳いでいながら「安全」を言い続けるため、当初「みんなたべなきゃだめよ、風評被害がかわいそうだから」と言っていたタレント(モリなんとかさん)も無言になってしまう始末でした。
東電と政府は農家に全額保障をするべきです。消費者に押しつけようとするのは無理筋なのですから。できても危険をちゃんと示しながら、例えば「五〇才以上の人間はまあガンの確率が上がってもいいと「蛮勇」をふるって食べましょう」という話しです。
同じ番組で、計画停電のコーナーでは、「夏場に1000万キロワット不足する」と述べて、どうやっても不足する、「しかし、今止まっている柏崎刈羽原発を動かすと350万キロワットになる」「しかし、地元住民の了承が必要です」と思わせぶりにコメントしました。
なんということか。柏崎は1~7号機まである合計出力820万キロワットの日本最大の原発サイトです。2007年の中越沖地震で緊急停止し、火災が起きたのに外部に知らせず事態を悪化させたり、「想定外」の基準加速度によって各部が金属疲労をしていると思われます。実際に放射能漏れを起こして「風評被害」が新潟県産品で起きて県知事が問題化しました。本来は全面的に検査すべきところを無理矢理再稼働させてしまったものです。その上現在停止中の2,3,4号機を動かせというのでしょうか。さらに「地元」に圧力をかけよといわんばかり。東電管内でもない土地にさらなる事故の危険を押しつけようというとんでもない「対策」です。
この東電の「無計画停電」「恫喝停電」と呼ぶべき大規模停電対策ですが、まずは大口需要者の一定割合でのカット(いきなりの停電による操業停止よりは生産計画がたてやすいでしょう)、各家庭の契約アンペアのカットを実行すべきといわれます。鉄道や病院・信号を停止させてさらなる人災を起こすべきではない。各家庭もブレーカーが落ちても使用電力をカットしてからあげれば短時間にライフラインは復旧できるのですから、みんな協力を惜しまないと思います。
さらに、まずは自前の発電所を持つ企業によって生産される電力を全量買い取りすることが考えられます。
中期的には太陽光発電など(現在はパネル設置家庭の余剰分に限って買い取りすることにし=普及することを妨げてきたことを悔い改めて)全種全量買い取り制度を導入して、風車や太陽光発電の個人・家庭からコミュニティ、ベンチャー企業など多様な起業を可能にすることが必要でしょう。
長期的には、スマートメーターの普及、スマートグリッド化など、被災地の復興も展望しながら各地域のエネルギー自給・経済力を高める政策を実現しなければ、と思います。このあたりはいずれ地域で勉強していきたいですね。

情報源としておすすめのサイトなど

会員になって数年ですが、元AP通信の記者だった神保哲生氏が始めたインターネット報道機関「ビデオニュース・ドットコム」では、震災以来無料放送で原発事故の現状、想定される事態、原因と背景について詳しく解説がなされています。
http://www.videonews.com/

連日、12日以来放出された放射能による汚染がニュースになっています。相変わらずマスコミに出てくる御用学者たちは空間放射線量を使ってレントゲン一回にも満たないから安全だといっています。雨で水源地にチリが落ちて、河川に流されて浄水場に至ったわけです。乳児の「暫定基準値」100ベクレル/リットルを超える放射能が測定され、ミネラルウォーターが買い占められています。雨は農作物の上にも降り注ぎ、各地のほうれん草など葉物を中心に汚染されたものが報告されています。
わたしたちはこれから長期間にわたって、放射性物質の監視と管理を日常的に続けていかねばならない社会になってしまいました。チェルノブイリの後、当時の西ドイツ政府はやはり空間線量のみ問題にして安全だといっていましたが、やがて牛乳や野菜の汚染が明らかになって、反原発運動が母親たちを中心にして盛んになっていきます。当局はドイツの原発は安全だといっていたのですが、実はチェルノブイリの事故の直後の5月にドイツ国内の原発でも事故によって放射能漏れが起きていて、電力会社は事故を隠していました。市民運動が放射能汚染の調査結果から事故隠しを発見してはじめて電力会社が認めるといった経緯もあって、ドイツでは脱原発が政策としてかかげやすくなっていきます(その後に「温暖化対策」という奇手が推進派から出てくるのですが)。

27日、東電が福島原発2号機の建屋の地下にたまる水を検査したところ、「通常の原子炉内の水」の放射能の「1000万倍の強さ」の放射能を持っていた、と発表しました。夕方になって、保安院は計算が間違っていて1000万倍ではなかった、再計算中と間抜けな発表をしましたが、いずれにしてもそのたまり水の表面の放射線値は計測器の上限値1000ミリシーベルトを振り切ってしまっていることに違いはないという汚染レベルにあります(計測員はあまりのレベルに再計測できずに退避)。

26日の時点で、原子力資料情報室(http://www.cnic.jp/)のストリーム会見で、元格納容器設計者(田中三彦氏、後藤政志氏)が原発事故の初期から何が起きていたと考えられるかを技術的観点から解説しています。
http://www.ustream.tv/channel/cnic-news

日本の原子力安全委員会は20年間準備してきた「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム・SPEEDI」を放射能放出が起きた12日から二週間たっても本格稼働させた結果を発表しておりません。しかし、海外では推定値と断りながらも同様のシステムの算出結果を公開しています。
ドイツ気象庁の発表した放射能雲の到達予測範囲元図のURL(26日付)
http://www.dwd.de/bvbw/generator/DWDWWW/Content/Oeffentlichkeit/KU/KUPK/Homepage/Aktuelles/Sonderbericht__Bild5,templateId=poster,property=poster.gif
米エネルギー省のSPEEDI解析結果(25日付)
http://energy.gov/news/10194.htm

NHKの姿勢が(たぶん水野解説委員を中心にして)変化してきました(山崎記者は相変わらず頓珍漢な「安心」発言が見えます)。つまり東電と心中するしかないという民放の姿勢から、「スポンサーシップから自由な公共放送」(これも現場記者は接待漬けにされて洗脳されているでしょうが)として庶民側に立とうという姿勢が出てくる可能性はあります。ただし、数日前にも水野解説委員は番組中で政府の情報の出し方を批判し、しかし翌日の番組では非常に暗い顔で、政府批判は控えていたといわれていて、つまりは上層部から圧力がかかっているのでしょう。

西ドイツの州議会選挙で国会与党CDUは38%で第一党であるが、なんと緑の党が29%で第二党、社民党が24%で第三党、緑と社民で連立合意できれば緑の州首相が誕生するという。
福島の絶望はドイツで希望となって人類は存続していけるのでしょうか。

2011年3月29日火曜日

卒園式にて

3月26日、2歳の娘の通っている保育園で卒園式がありました。園庭には光があふれていて、強めの風が時おり吹いていました。年長さんから2歳児のクラスまで、リズム体操が披露されて、卒園児たちは力一杯跳び箱に挑戦していて、思わず笑ってしまう場面も多くありました。
しかし、明るい園庭が眼に入ってくると、その大気中には放射性核種のチリが舞っていることを思いだし、うつむいてしまうのでした。
もうわたしたちは震災に続く福島第一原発事故の前の世界とは違う時代を生きています。

思えば何度もこのような人災を起こさないような社会にする機会はあった。1986年のチェルノブイリ、1979年のスリーマイル。しかしわたし(たち)は失敗してきてしまった。

もっと射程を長くとって、1968~69年、1945年、1918年.....。時々、それぞれの機会で違った社会ができた後の人類の姿を想像する事があります。
しかし、ともかく現存する社会はこのような社会であって、それを前提にして生きていくしかないのですよね。それに、世界大の機会だけでなく、諸個人の直面するあらゆる機会で悪戦苦闘した先人たちの努力があったからこそ、まだ滅亡にいたっていなかった、といえるのかも知れません。

中学高校から愛読してきた安部公房経由で知った魯迅の「絶望の虚妄なるは希望の虚妄なるに相同じい」という言葉を思い出します。
いずれにしろ、これから「生きるための戦略・戦術」を個人・家族・任意集団・地域・社会……で共同して練っていくしかないではありませんか。あらゆる知恵を出し合って。「いま・ここ」からしかはじまらないのですから。