2011年5月30日月曜日

進行する海洋汚染と海産物への生体濃縮・内部被曝

グリーンピースによる海洋汚染調査とその報告です。
「海洋調査結果、21サンプル中14サンプルが日本政府の定める暫定規制値を超える。政府にたいして調査の強化や水産関係者への補償を要請」

上杉隆氏がこのグリーンピースの調査と海産物汚染についての記事を『ダイヤモンドオンライン』「週間・上杉隆」に書いています。
「世界で2ヵ国しかない、グリーンピースの海洋調査を断った国・日本。政府は今すぐ独自に調査をやり直すべきだ」
「ストロンチウム90の海産物汚染に無策な日本政府。細野豪志首相補佐官の「約束」に期待したい」
他のバックナンバー「情報隠蔽で世界の孤児になりつつある日本。もはやチェルノブイリ当時のソ連以下かもしれない」なども興味深い。
(6/2追記:『現代ビジネス』の記事「野菜と海藻(ワカメ・コンブ・のり)放射能汚染調査の全記録」で官邸内部で行なわれた「グリーンピース対策」、海産物だけでなく陸側で行なわれた農産物の測定値も紹介されています。南相馬市のホウレン草の値はショックです。「原発に頼らない地域づくり」という市長さんの方針に賛同して、これから被災地支援活動をしていきたいと思うのですが。6/1の記事「放射能で『汚れた土』がこれからしでかすこと」も併せて問題提起として考えていきたい)

三重大学生物資源学部准教授の勝川俊雄さんの公式サイト、モットーは「長いものには、巻かれません。研究者の顧客は誰か?」という心強いもの。「食品の放射性物質の暫定基準値はどうやって決まったか」「海水が『不検出』でも、魚の汚染は進みます」など、専門の海洋汚染、魚の種類や部位別・核種による生体濃縮の傾向など、大変参考になります。特に一番目の記事では、3月25日に行なわれた食品安全委員会の議事録を追いながら、基準値が現状追認側に誘導されていく課程が検証されています。

5月28日放送の「ビデオニュースドットコム」の無料コメンタリー部分、前半は「布川事件」に見られる日本の刑事司法の崩壊をジャーナリスト青木理氏と神保・宮台両氏がコメントしています。後半は福島の小学校での校庭表土除去作業の実際を福島現地のジャーナリスト藍原寛子氏と神保氏が取材した映像を宮台氏とコメントしています。マスクをする小学生たち、簡易計測器での測定数値、用務員のおじさんが草をむしり「全部ひまわりを植えるんだ、放射能除去にいいという話し聞いたからさ」という場面で涙目になる反面、対する文科省の対応や被災者と無縁の政治家たちの動きなど、怒りを新にします。
布川事件では警察と検察が「社会の安心」のために証拠もない容疑者を逮捕してでっち上げ、マスコミも裁判所もずさんな立件をチェックできない司法の腐敗がまた明らかになりました。
実は原発関係でも司法の腐敗が極まっていたことが明らかになっています。最高裁判事・味村治は1992年に伊方原発1号炉訴訟・福島第二原発1号炉訴訟において原告の上告を棄却し、「安全」というお墨付きを与えていたのですが、なんと退官後の1998年、東芝の「社外監査役」に就いていたというのです。(http://www.mynewsjapan.com/reports/1437)

2011年5月21日土曜日

内部被曝はどのような被害をもたらすか

内部被曝の危険性について、矢ヶ崎克馬琉球大名誉教授が訴えるビデオニュースの無料放送です。
「依然として最大の脅威は内部被曝のリスク」
物理学者として、アルファ線、ベータ線を発する核種を体内に取り込んだ場合に何が起こるのかをわかりやすく解説してくれています。矢ヶ崎氏は福島県内で市民団体の要請で内部被曝の危険性について講演し、線量調査も実施したということです。

欧州放射線リスク委員会(ECRR)の2010年報告書を「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」が緊急に翻訳しました。大部なものをPDFで公開してくれています(これから勉強しないと)。
欧州放射線リスク委員会 2010年勧告『放射線に安全な線量はない』PDFにとぶ目次ページ
ECRR(ヨーロッパ放射線リスク委員会でも検索でヒット)は2003年勧告(これも「美浜の会」が翻訳、出版)で国際放射線防護委員会(ICRP)の基準を内部被曝の影響を過小評価していると批判し、チェルノブイリ事故の被害についても実際にはICRPの見解より深刻な被害があったと報告しました。
「本委員会は、現在のガンに関する疫学調査は、1959 年から1963 年にかけて世界中で行われた大気圏内核実験による被曝と、核燃料サイクル施設の稼働がもたらした、さらに大量の放射能放出が、ガンや他の健康被害の明確な増加という結果を与えているとの結論に達した」「本委員会ECRR の新モデルと、ICRP のモデル双方を用いて、1945 年以降の原子力事業が引き起こした全ての死者を計算した。国連が発表した1989 年までの人口に対する被曝線量を元にICRP モデルで計算すると、原子力のためにガンで死亡した人間は117 万6300 人となる。一方、本委員会のモデルで計算すると、6160 万の人々がガンで死亡しており、また子ども160 万人、胎児190 万人が死亡していると予測される」「本委員会は以下を勧告する。公衆の構成員の被曝限度を0.1 mSv 以下に引き下げること。原子力産業の労働者の被曝限度を5 mSv に引き下げること。これは原子力発電所や再処理工場の運転の規模を著しく縮小させるものであるが、現在では、あらゆる評価において人類の健康が蝕まれていることが判明しており、原子力エネルギーは犠牲が大きすぎるエネルギー生産の手段であるという本委員会の見解を反映したものである」(2003年勧告「結論」部分より)

ECRR勧告作成のメンバーで、唯一の日本人である沢田昭二氏(名古屋大学名誉教授)の最新論文がカナダにある「ピース・フィロソフィー・センター」の日本語サイトに載っています。
「放射線による内部被曝——福島原発事故に関連して——」
同サイトはとても充実しています。じっくり見なくては。
こんな記事がありました。
「NHKに一瞬映った「WSPEEDI」3月15日被ばく予測マップ」
「公表していない図」がNHKで画像となっているのは、内部リークということなのでしょうか。数値は確かに高めに出る(というか避難勧告をするためには安全策で高めに出ても有効)だろうし、「正確ではない」でしょう。だけどこの図を見ると「どういう方向に逃げるのがリスクが高い」かは判断できる。だが安全委員会はこの図の赤い孤の部分(北茨城・水戸・野田・太田・前橋に至る人口密集地)の住民が「パニック」になるのを怖れたのだと思う(自分たちのレベルで国民を判断するなよ、といいたい。国家公務員や学者と違ってみんな地域生活があって逃げたくともそうそう逃げられないのだ)。3月21、22日の雨の時点での予測マップを原子力安全委員会は「持っているが公表していない」のだと強く推測されます。

2011年5月19日木曜日

低線量被曝と内部被曝による晩発性障害について

「東葛ホットスポット」。ここ数日「はかるくんII」で測った数値では初石駅近辺路上1mで0.3μSv/h、木造住宅内で0.1を切るようになってきました。3月21、22日の雨で東葛地域に落ちたチリの核種は行政当局が未だに測定していないために正体がはっきりしませんが、ヨウ素とセシウムが主だとすると、そのうちヨウ素が1カ月で5%程度に減衰しているために徐々に下がっているようです(もちろんこれは放出の続いている福島第一現地からまた大放出があったり、台風などでチリが巻き上げられて拡散し、ふたたび近辺に流れてきたところに雨で地上に落ちるなどがなければ、という仮定でです)。しかし、これからセシウム137など半減期の長い核種が残れば百年単位の計測と疫学的影響調査が必要になるでしょう。体内に取り込んだ場合の影響については日本政府の数値はもちろん国際放射線防護委員会(ICRP)の数値も過小評価しているといわれています。むしろ「フクシマ」の知見が蓄積されて、これから世界での原発事故対策に取り入れられていく、ということです。そこで「日本ではこうやって被害を低減できた」となるか、「日本ではこのようにしたために被害が拡大した」となるかなのです。
行政とのやりとりで感じるのは地域自治体の対応が国家官僚・御用学者の孫引きなことです。よくいわれますが、エリート国家官僚は数年で担当が替わるために長期的な責任を問われない体質になっている。地域住民と直に接する自治体職員のみなさんを私たちの側にとりもどさなくては。官僚の仮面なんかとって人間に戻ってね、と。

政府・御用学者ではない情報について。
崎山比早子さん(元放射線医学総合研究所主任研究官、医学博士、現高木学校)の動画
原子力資料情報室の映像アーカイブ

文書3点です。
ドイツ放射線防護協会「日本における放射線リスク最小化のための提言」(PDF)
日本政府の数値でなく、ドイツ放射線防護令を適用した場合の「がまん値」についての提言。推計の前提がラフですが、日本で市民・専門家によってしっかりした対策をつくるための参考にはなるでしょう。

「チェルノブイリ原発事故によるベラルーシでの遺伝的影響」
ベラルーシにおける事故後の先天性異常についてのデータがあります。

「放射線と健康」アーネスト・スターングラス博士
アメリカで原水爆実験と原子力事故による晩発性障害の研究をしてきたスターングラス博士が2006年青森で行なった講演のまとめです。「どなたか広島・長崎以降の国家医療費の総計を、原子力発電所の推移とくらべて調べてみるといいでしょう」。

以上文書3点の出典サイト「福島原発事故情報共同デスク」の「放射能の基礎知識」
(ここに紹介されてる「よくわかる原子力」「キッズページ」子どもにみせてみようかな)

2011年5月3日火曜日

飯舘村のみなさん・2

先に「飯舘村後方支援チーム」の活動についてお知らせしました(「飯舘村のみなさん」)。
その後の村の様子について4月30日に平塚で行われた報告会の様子です(岩上安身氏のサイト)。
シンポジウム「飯舘村支援のために市民ができること」
第一部で「後方支援チーム」による報告、第二部で河野太郎自民党議員のエネルギー政策の今までと今後について、第三部質疑応答となっています。
飯舘村のみなさんの避難が遅くなっているのは、初期に県が派遣した「専門家」が「安全だ」と言ったためだという。「手を洗えば大丈夫、路地野菜も洗えば大丈夫、セシウムもそのうち雨で洗い流されるから心配ない」とまで言ったそうです。その後に「計画的避難地域」という指定を村全体が受けたため、村の人々は安全じゃないのか、と困惑している。
(6月3日追記:フリージャーナリスト田中龍作氏の記事「飯舘村 山下教授 『洗脳の全容』」、4/1に行なわれたあの「福島県放射能リスクアドバイザー」による村議員・職員向け非公開セミナーでの発言を再現しています。詐欺罪とか成立すると思うけど。いや、業務上過失傷害か)
報告者のひとり小澤祥司氏(環境ジャーナリスト)が「ダイヤモンドオンライン」でレポートを執筆しています。「持続可能な村づくりを奪われた村――原子力災害の理不尽な実態」

国と東電は責任をもって福島第一から数キロごとの同心円上にきめ細かくモニタリングポイントを設定し、核種分析を含めた情報を収集して全面開示を行なうべきです。
柏・流山・松戸・金町もミニホットスポットと言われてますが、とにかくこの地域の行政が第一になすべきは国・東電と交渉しつつも、動かないなら自前でモニタリングを充実させてきちんと情報を開示することでしょう。周辺農家の作物もきちんと測定しないと、住民の買い控えは収まらないでしょう。信頼のおける数値が出てくれば、乳幼児には食べさせない、子どもをつくるつもりのない人は食べる、などの判断ができるようになります。特に地域で有機農業などを実践してきた農業の次代を担う若い農民の方にとっては死活問題になりつつあると思います。

東電・責任のとらせ方

大メディアに一斉に流された「賠償スキム」は、東電が国民を人質にとって存続を図る方策だといわれます。あの作文は急遽2兆円を追加融資した「メガバンク」が焦げ付き回避のために作り、財務省のチェックの後にアドバルンとして打ち上げてみたということらしいです。
5月2日、環境エネルギー政策研究所の第3回週定例記者会見の様子です。
http://www.ustream.tv/recorded/14427069

ISEPでは被災地復興にむけて「つながり・ぬくもりプロジェクト」を起ち上げました。その報告を顧問の竹村英明氏が行なっています。
嬉しい話題としては、長野県知事が「自然エネルギー100%」という方針を出したそうです。

「東電ゾンビスキム」については、高橋洋一氏が「政府の東電救済策では国民負担は10兆円になる」と警鐘を鳴らしています。
「現代ビジネス」記事「大増税路線に騙されるな!」
小泉竹中路線の「郵政改革」で具体的な政策スキームを立案していた財務官僚だった高橋氏は、「霞ヶ関埋蔵金」とか官僚の金城湯池だった聖域のいくつかを明るみに出しました。結果として官僚組織からは天敵扱いされ、外にでたあげく不可思議な事件で逮捕されましたが、なんとか復活してきています。一方で、小泉竹中路線は20年遅れのサッチャリズムであって、非正規雇用の全面化、地方にかろうじて残っていた地域共同体の息の根を止めたという巨大なマイナスをもたらしたという点を忘れるわけにはいきません。竹中平蔵というのは、非関税障壁としての日本社会の慣行・既得権益の良いも悪いも一緒にしてつぶして欧米資本に「自由化」しただけではないか、というのが私の評価です。
その点は気をつけながらも、高橋氏は官僚の操作手法を知り尽くしている数少ない「在野」の人物として貴重だと思います。TPPに賛成するなど、アメリカの戦略にあまりに無防備だとは思いますけど。
「政府案が、巨額の賠償を考えると東電が債務超過になっているにも関わらず、債務超過にさせないように国民負担をつぎ込むのは、おかしい。これで利益を得る人は、東電株主や社債権者だ」